【解説】エビデンスベースドNLP活用法|NLPのテクニックがエビデンスのある技法を効果的にする
更新日:2023年12月15日
公開日:2023年10月9日
エビデンスベースドNLP活用法
NLPのテクニックがエビデンスのある技法を効果的にする
NLPを学ぶならエビデンス(科学的な根拠)があるテクニックを学びませんか?
エビデンスベースドNLPでは、科学的根拠に基づく実践(EBP)の立場を尊重し3本柱としています。
- 科学的根拠に基づく実践に沿ってNLPのテクニックを使う
- 変化するメリットとリスクの調和
- クライアントの期待に合わせたアプローチ
このような考えを教育領域では
「根拠に基づく実践(Evidence-Based Practice:EBP)」と呼びます。
根拠に基づく実践(EBP)は伝統的に3つの基本原則をまとめた
「三本足の椅子(スツール)」の観点から定義されています。
①ある治療が効くのかどうか、またなぜ効くのかについての入手可能な最良の研究エビデンス
②それぞれの患者固有の健康状態と診断、それらに対して取りうる介入の個々のリスクと利益をすばやく特定する臨床的専門知識
③クライアントの好みと価値観の3つです。(出典:Wikipedia|根拠に基づく実践)
クライアントの特性や価値観、置かれている環境(文化的な背景)などを丁寧に把握し
その上で、個別にエビデンスを適用していきます。
それでは、エビデンスベースドNLPが具体的にどのような視点でのアプローチとなるのか
どのように活用するのが良いのか見ていきましょう。
科学的根拠に基づく実践に沿ってNLPのテクニックを使う
クライアントの特性を尊重するとは?
エビデンスに基づくカウンセリング効果の研究によると、
その結果を規定する主な要因は、カウンセリングを行う側ではなく
クライアント側にあるとされています。
また、クライアントの動機づけや関与の高さは
カウンセリングの結果と密接に関連しており
心理的な機能が高いクライアントは
より良いカウンセリングの結果が見出されています。
そのため、クライアントの特性を理解し
それぞれの特性に合わせたアプローチによって
信頼関係を築き、クライアントの動機づけや関与の高さといった
心理的な機能を上げていくことが重要になってきます。
人が行動を起こすための前提は「気づき」であり
「気づき」がない限り、人は主体的能動的に
行動できないし、自己成長しないということです。
クライアントの感情の欲求と特性を把握し
エビデンスベースドNLPを活用することで
より効果を得ることができます。
①ガイドに頼りたいクライアント
気づきを得ても、自ら行動することや
変化することへの恐怖心から、ガイドに依存して
問題を解決しようとしてしまいます。
クライアントへの質問を通じて
クライアントの思考を手助けし
行動への障害を取り除き、行動につなげます。
その際、本人が困難と感じるレベルの行動を促すのではなく
比較的容易に踏み出すことのできる
小さな一歩を設定してあげましょう。
②自分の意見を尊重してほしいクライアント
このタイプのクライアントは気づいてはいるのに、
上手く進めないことなど、自分の中でのジレンマを
抱えているかもしれません。
クライアントの話に耳を傾け
時間をかけて傾聴しましょう。
クライアントの意見を
承認することで、信頼関係を築きます。
それから質問を投げかけ、クライアントの考えを
話してもらいながら、自ら気づくきっかけを作り
行動に向かうサポートをする必要があります。
③未来志向のクライアント
自分で得た気づきを積極的に
行動に落とし込むタイプです。
このタイプのクライアントには、高い目標や
難易度の高い課題を与えることで、
クライアントに新たな視点が生まれ
そこから多くの気づきを得ていきます。
④過去の問題の中にいるクライアント
このクライアントの問題点は、本人は自覚なく
悲劇のヒロインを演じることに夢中で
気づきの有無にかかわらず
変わりたいと思っていないことです。
変えることができない
過去の出来事に対して嘆いているため
今、クライアントが解決できる課題ではなかったりします。
過去の問題の中にいる状況に気づいてもらい
そこから脱却し、未来を見たいのか、変わりたいのかを
問う必要があります。
そもそも、クライアントが
変わりたいと思っていないのであれば、
私たちはガイド役として、
介入することはできないのです。
過去の出来事自体は変えることはできませんが、
その出来事の意味や、そのときに味わった感情を
NLPのテクニックで変えることはできます。
気づきが生まれるきっかけになるかもしれません。
文化の違いを尊重するとは?
「自己」は、文化や社会的状況
また国や地域によって異なると考えられており
それを文化的自己観(cultural construal of self)と呼び
主に東洋文化と西洋文化で比較されます。
①東洋文化
東洋文化圏の相互協調的自己観
(interdependent self)
東洋文化圏に生きる人たちは
集団社会における自己の位置づけ(役割規範)や
他者からどう見られているかという自意識(世間体)に
影響されやすく、相互に「協調・依存する個人」に
よって社会生活が営まれるべきという文化的自己観を持っています。
自己は他人や周囲のものごととの結びつき、
その関係を重視する存在です。
周囲との関係を持ってアピールし
原因帰属では「周囲のサポートで」という感覚になります。
②西洋文化
西洋文化圏の相互独立的自己観
(independent self)
西洋文化圏に生きる人たちは、
個人の気質・性格においても
社会の制度・規範においても
相互に「独立した個人」が判断と選択をしながら
行動するという文化的自己観を持っています。
自己とは、他人や周囲のものごととは
区別される独立した存在であると考えます。
自身の特性を持ってアピールし
原因帰属では「自分の努力で」という感覚になります。
③多文化が交わるアメリカ
あらゆる人種、民族、文化、そしてあらゆる経済層が
存在するアメリカでは、価値観の対立や生活文化
芸術文化のあり方などの文化的な事柄が
政治上の争点となり、どちらをとるかをめぐって
政治と社会の両方が二分されてきました。
アメリカでは、対立文化と
個々の自己主張が根付いています。
アメリカ人のスピーチは、ジョークから始まります。
笑いを共有することで、個々に一体感が生まれる
大切なファーストステップなのです。
NLPはアメリカで生まれたものです。
そのため、当初のNLPはアメリカ人に合わせたもの
アメリカの文化における事例やテクニックで、日本に伝わりました。
このような背景を知らず、文化や言語的な違いを
無視してNLPを学んでしまうと、 上手くいきません。
④調和文化の日本
日本は一体感や和を重んじる、調和文化です。
挨拶をひとつとっても、アメリカと日本の差は顕著です。
アメリカの朝の挨拶「Good Morning」の元々の表現は、
「I wish you a good morning 」です。
話し手の「私」が、聞き手の「あなた」にとって
この朝が良いものであると祈っていますよ、と
自分の行為を主張したものになります。
一方、日本の「おはよう」は、挨拶する人たちが
「早い時間ですね」「そうですね」とその気持ちを
お互いに確認し、共有することです。
主語に人は存在せず、これは行為ではなく
状況を示したものになります。
日本では同じ状況を共有することで
共感と一体感を得る効果を生み出します。
英語は、主張が目的であるのに対し
日本語は、共感が目的となっています。
これが、日本の文化に根付いているのです。
また、日本人にとって、「ねぎらい」は
とても大切な習慣であり文化です。
「ねぎらい」は、相手の心に響き、癒します。
しかし、英語には「ねぎらい」に相当する言葉がありません。
「ねぎらい」は日本独特の文化なのです。
この文化の相違が、 NLPを学ぶ方に
大きな違いを産み出します。
日本でNLPを学ぶ方には、 文化の違いで起きる弊害を
理解して上で、日本の文化で使えるNLPを学び、
活用してほしいと思っています。
⑤「安全」という言葉がないロシア
ロシア語には「安全」という意味の言葉がありません。
代わりに「危険がない」を意味する言葉があります。
これは、ロシアという国が
昔から外敵からの侵略を受け、
危険と隣り合わせあったことの表れなのでしょう。
常に外敵に対して戦う姿勢を見せなければ
攻め滅ぼされてしまう。
これが、ロシア人が昔から持っている
世界観だとすると、例えば、ロシア人に対して
セッションに入る前に、
「今日のこの時間は、安心・安全な場を
提供したいと思っています」とお伝えしたとしても
こちらの意図は相手には伝わらないということです。
私たちは、意図せずに
自分たちの文化に合わせて
前提を作ってしまっています。
これは日本人同士であっても、よく起こりうることです。
専門用語を活用して話をしてしまうことなども
そのひとつでしょう。
相手に対して、言語だけではなく
ジェスチャーや表情などの非言語で
メッセージを伝えることもできるのですが
相手が「???」となってしまった時点で、
相手は話に集中できなくなり、ラポール
(互いに心が通じ合い、安心して
自己開示ができるよいカウンセリングに
必要なクライアントの心理状況)は途切れてしまいます。
クライアントにとって有益で
効果的なカウンセリングにおいては、
相手の文化的背景や価値観を
理解する姿勢が常に求められているのです。
選考期待を尊重するとは?
クライアントの期待が高まれば
セッションは更に効果を増すことが
エビデンスとして証明されています。
自分の進みたかった道がどんどん開けていくのであれば
クライアントの期待も高まっていくことでしょう。
そのためにも、クライアントの意志を
尊重することはとても大切な要素となってきます。
①クライアントは変化の仕方を知っている
クライアントは、自分に関する最新の情報を持ち
どのような習慣が成果や行動を促進するかを知っています。
さらに自分自身の経験から
どのような決断が必要になるかを理解しています。
答えはクライアントの中にあります。
クライアントに対して、ガイドをする
あなたの意見を押し付けてはいけないのです。
ガイドができることは、相手を尊重し、
相手に寄り添い、ゴールに向かって
前進できるようにサポートすることです。
物語の主役も、行動を起こすのもクライアントです。
ガイドは、クライアントと協働関係を築き
クライアントの中にある答えを確認
見出しながら、決定を促していきます。
②コーチング的なアプローチをしてほしい
未来思考型のクライアントは
コーチング的なアプローチを望みます。
コーチングとは、人やチームが
最大の能力を発揮できるよう
サポートするプロセスのことです。
クライアントが達成したい目標
(あるべき姿)を設定し、達成に向けて
焦点を合わせていきます。
クライアントの潜在能力やアイデア、
強みを引き出しクライアントが望む
人生やキャリアにおける未来の目標を
達成するためのサポートをします。
①「何を得たいのか(目標の明確化)」
②「現状はどうか(現状把握)」
③「目標と現状のギャップを埋めるためには何が必要か」
(ギャップの明確化)
④「何から始めるか(行動計画)」
コーチングで重視するのは、クライアントに
「考えてもらうこと」です。
抱えているテーマに対し、クライアント自身で考え、
答えを見出し、気づきが得られるように
コーチは最適な質問を考え、問いかけます。
目的と目標を自分で設定できる
人格に育て上げることが、セッションのゴールです。
③カウンセリング的なアプローチが必要
カウンセリングは、現在抱えている
問題を解決するために使われます。
カウンセリングで重視するのは
クライアントに「話してもらうこと」です。
内に抱えていることを言葉にできるよう傾聴し、
頭の中や気持ちが整理できるようにガイドし
クライアントとともに過去を振り返り
さまざまなことがらについて深く掘り下げていきます。
①「現状の問題(現状把握)」
②「どうなったらいいか(理想の明確化)」
③「理想と現状のギャップを埋めるためには何が必要か」
(ギャップの明確化)
④「何から始めるか(行動計画)」
セッションにより、クライアントを
より良い状態へ導くことは
カウンセリングもコーチングと変わりません。
クライアントの目的、テーマ、心の状態次第で
適切なアプローチを選択する必要があります。
役立つ臨床技術
これまで、NLPはエビデンスに乏しいとされてきました。
膨大な研究事例により結果はあったものの
個々に対応してきた結果であったため
既存の事例に対し、バイアスを取り除くことが
難しいとされてきたからです。
一方で、心理学の世界では、カウンセリング効果の研究における
エビデンスに基づく技法として、以下のようなものがあります。
そして、そのエビデンスは、NLPのテクニックにも
該当するものであることが解っています。
エビデンスに基づく技法 | 内容 | 活用・効果 | これに相当するNLPのテクニック |
傾聴 |
|
| ラポールテクニック |
言い換え |
|
| バックトラッキング |
質問 |
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| メタモデル |
解釈 |
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| リフレーミング |
指導と助言 |
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進展的フィードバック |
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電話やオンラインを活用した介入 |
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心理劇 |
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| 映画監督 |
フォーカシング |
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| パートを利用したワーク |
エンプティチェア |
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| チェアワーク |
アクセプタンス&コミットメントセラピー |
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| いくつかの基本ワークの複合 |
認知行動的アプローチ |
|
| NLPの基本テクニック |
エビデンスの乏しいNLPにエビデンスのある技法を取り入れる
エビデンスに乏しかったNLPに対し、
エビデンスのある技法が活用できるということは、
「NLP方法論やそのパターンは本当に有効なのか?」という
問いに、「YES!」と言えるということです。
また、
- 人が変容するタイミングが解る
- どのようなテクニックが成功するのか? 失敗するのか? が解っている
- どのぐらいの効果を期待していいのかが解るとしたら、どうでしょう?
エビデンスベースドNLPの活用法が
どのような素晴らしい結果につながるかは
容易に想像ができるはずです。
2006年にアメリカ心理学会が公表している
「心理学におけるエビデンスに基づく実践
(EBPP:Evidence-based Practice in Psychology)」のガイドラインには、
「心理学におけるエビデンスに基づく実践 (EBPP)とは
患者の特徴、文化、および志向性という枠組みのなかで
得られる最新最善の研究エビデンスと
臨床上の判断を統合させたものをいう。」とし、
「エビデンス(根拠)は重要視するが、
必ずしもエビデンスのみにこだわらずに
クライエントの様々な要因を加味して
実施する介入方法を選択してください。」と記載されています。
このようなことが言えるのも、以下のようなことが
エビデンスとして示されているからです。
「最も成功するカウンセリングの中心に位置しているのは、
自分自身の人生に変化を起こすことを望み、
深くかかわることのできるクライアントである。」
「そして、信頼と好意を寄せて、協働できると出会える
セラピストに出会えるのであれば、そのクライアントは
自身のゴールに向けて、様々な技法と実践を活用することができる。」
エビデンスがあることは、効果があることの
証明となるだけではなく、本当に必要な部分に
フォーカスすることにつながります。
エビデンスベースドNLPがどんどん活用されていけば
NLPの効果を更に高めることができるでしょう。
ぜひ、あなたもエビデンスベースドNLPを学び、活用してみてください。
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